「辞めたい」は、サインのひとつ
朝、出勤前に気持ちが沈む。休日なのに職場のことが頭から離れない。そんな状態が続いているなら、それは「今の状況が合っていない」というサインです。
ただ、その気持ちのまま転職活動に入ってしまうと、うまくいかないことがあります。転職先でも似たような問題にぶつかったり、焦って選んだ職場が合わなかったりするケースは少なくありません。「辞めたい」という気持ちと、「どうすれば解決するか」は、別の問いです。まず必要なのは、なぜ辞めたいのかを整理することです。
辞めたい理由は、大きく3つに分かれる
1. 環境の問題(その職場特有のもの)
院長の方針が合わない、スタッフとの関係がつらい、シフトの組み方に不満がある。こうした問題は、職場を変えることで解決できる可能性があります。逆に言えば、転職することで状況が大きく改善するケースです。
ただ、「環境の問題」にも幅があります。院長との関係なら「話し合いで改善できるか」「そもそも修復が難しいか」によって取るべき行動が変わります。スタッフとの関係なら「特定の人との問題か」「職場全体の雰囲気の問題か」で話が変わります。
「この職場特有の問題なのか」「どの職場でも起きうる問題なのか」を区別することが、転職後のミスマッチを防ぐポイントになります。
2. 職種の問題(歯科衛生士という仕事そのもの)
患者対応が苦手、技術に自信が持てない、この仕事を続けていくイメージが持てない。こうした場合、転職よりもキャリアの棚卸しが先に必要かもしれません。別の職場に移っても、同じ悩みが続く可能性があります。
ただ、「職種の問題」に見えて、実は「今の職場の問題」であることもあります。院長が怖くて技術的なフォローが受けられない、失敗を責められる環境でスキルへの自信が持てなくなっている、というケースは珍しくありません。「歯科衛生士の仕事そのものが嫌なのか」「今の職場の環境が合っていないのか」は、慎重に区別する必要があります。
3. 一時的な疲弊
繁忙期や体調不良、プライベートの変化が重なって「辞めたい」と感じているケース。こういう時期は、少し時間をおいてから判断した方がよいことがあります。状況が落ち着くと、気持ちが変わることも多いです。
「ここ2週間特につらかった」「今月は業務量が増えていた」「プライベートで大きな変化があった」という背景がある場合、今の気持ちがそのまま転職の判断軸になるとは限りません。「この疲れが落ち着いても、同じように辞めたいと感じるか」という問いを立てることが大切です。
複数の理由が重なっていることがほとんど
実際には、ひとつだけが原因ということはまれです。「院長とも合わないし、最近ずっと疲れてる。でも衛生士の仕事は嫌いじゃない」というように、複数の要因が絡み合っていることがほとんどです。
こういう状態のとき、「転職すれば全部解決する」と思いがちですが、整理しないまま動いても、転職後に「やっぱり変わらなかった」と感じることがあります。
理由が分かったあとにすること
辞めたい理由を言語化できたら、次のステップを考えることができます。
環境の問題が中心の場合 転職が有効な解決策になりやすいです。ただし、「次の職場ではその問題を避けられるか」を確認することが大切です。転職先を選ぶ軸が明確になります。
職種の問題が含まれている場合 まずは「歯科衛生士として続けたいか」を整理することが先です。続けたいなら、やりがいを感じられる環境を探す方向へ。そうでなければ、キャリアそのものを見直す話になります。
一時的な疲弊が大きい場合 転職の判断を急がないことが賢明です。休職や有給の取得、業務量の調整を先に検討する余地があります。
辞める前に確認しておきたいこと
辞めたい気持ちが強いときほど、退職後のことまで考える余裕がなくなります。勢いで退職することが悪いわけではありませんが、後から困らないために最低限確認しておきたいことがあります。
生活費の見通し 次の職場が決まる前に退職する場合、数ヶ月分の生活費があるかを確認しておきましょう。焦って転職先を決めると、条件の確認が甘くなりやすいです。
退職時期 医院の就業規則や雇用契約書に、退職の申し出時期が書かれている場合があります。法律上の話と、職場で円満に進めるための段取りは少し違います。無理に我慢する必要はありませんが、トラブルにならない進め方を考えることは大切です。
次の職場で避けたい条件 辞めたい理由が「院長との関係」なら、次はどんな院長像なら合いそうか。理由が「勤務時間」なら、何時までなら続けられそうか。辞めたい理由を、次に避けたい条件へ変換しておくと、転職先選びが具体的になります。
退職を伝える前に、言葉を整理しておく
退職理由をそのまま感情的に伝えると、話し合いがこじれることがあります。すべてを正直に伝える必要はありませんが、自分の中で理由を整理しておくと、落ち着いて話しやすくなります。
たとえば「人間関係が限界です」ではなく、「今後の働き方を考えた結果、環境を変えたいと思っています」と伝える方法もあります。どこまで伝えるかは状況によりますが、退職後も歯科業界で働くなら、不要な摩擦を増やさない伝え方を選ぶ方が安全です。
相談者の声
以前ご相談いただいた20代の歯科衛生士さんは、「毎朝、行きたくなくて。もう辞めるしかないと思ってた」とおっしゃっていました。話を聞いていくと、院長への不満と、慢性的な睡眠不足が重なっていたことがわかりました。転職という結論になるかと思っていたら、「職場を変えることより、まず生活リズムを整えたい」という気持ちが出てきて、その後ゆっくりと転職活動に移られました。
辞めたいという気持ちは本物でも、その先に何を求めているかは、話してみないとわからないことがあります。
よくある質問
辞めたいと思っているだけで相談してもいいですか? はい、もちろんです。「転職を決めた」という方より、「辞めたいけどどうすればいいか」という段階でのご相談の方が多いくらいです。
話した結果、転職しない選択になることはありますか? あります。むしろ「今は動かなくていいと思います」とお伝えするケースも少なくありません。転職を勧めることが目的ではないので、率直にお話しします。
辞めたい理由が自分でもよくわからないのですが、相談できますか? はい。理由が言葉にできていなくても大丈夫です。「何となくつらい」「うまく言えないけど合わない気がする」という状態からでも、話しながら少しずつ整理できます。
まず話してみることから
一人で考えていると、同じ場所をぐるぐるすることがあります。誰かに話すだけで、自分が本当に何に疲れているのか、何を求めているのかが見えてくることがあります。転職するかどうか決めていなくても、「辞めたい」という気持ちがあれば、それだけで相談できます。
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